過信は危険!加齢に伴う身体能力の低下は車の運転にこんなに影響する

高齢化社会を背景に、高齢ドライバー層が増加しています。

今回は、加齢に伴う身体能力の低下について紹介し、高齢ドライバーが自動車を運転する際のリスクについて解説いたします。

 

身体能力低下を自覚しない運転は大変危険!


 

免許取りたての20代のドライバーは事故発生率が高く、運転経験年数の長いベテランドライバーの方が、判断力等優れているため事故を起こす確率は低いと言われます。

 

ですが、ベテランドライバーでも加齢による身体能力の低下を自覚しないまま漫然と運転していると、大事故を起こしてしまう可能性が大いにあり得るのです。時速40kmでは1秒で約11mも進んでしまう自動車を安全に運転するには、判断力とともに身体能力が大きく関係することを忘れてはいけません。

 

ここからは、高齢ドライバーが自動車を運転する際のリスクについて「視力」および「体の柔軟性・筋力など」の2つの観点から話をしていきます。

 

 

視覚能力の低下に要注意!視覚情報に左右される自動車運転


安全運転のために、特に注意すべきは視覚能力の低下と言えるでしょう。

自動車の運転は、「認知・判断・操作」の繰り返しです。その中でも、認知情報の約80%は視覚情報と言われます。[注1]  

 

 

[注1] 「運転者の視覚認知機能の解明とモデル化の研究」デンソーテクニカルレビューvol.12

https://www.denso.com/jp/ja/innovation/technology/dtr/v12_1/18.pdf

 

 

🔲深視力の低下には眼球筋力の衰えも影響

 

自動車運転免許取得や更新のためには、以下のように視力の基準が定められています。

普通免許で「両眼で0.7かつ片目0.3以上」の視力が求められますが、実際はより安全な運転のためには1.0以上見えていることが望ましいとされています。

 

また、大型免許や二種免許の場合に実施される「深視力」とは「立体視」と「遠近感」を測定する検査です。

 

 

両眼視力

片眼視力

深視力

原付

0.5以上

0.5

なし

普通第一種・二輪

0.7

0.3

なし

大型・中型一種・第二種免許

0.8

0,5

三桿(さんかん)法の奥行知覚検査器により3回検査した平均誤差が2センチ以内

 

 

深視力は先行車両や対向車の遠近感、障害物を避けたり、狭い道路を走行したりする場合の立体感覚に関係します。これは大型車両や二種免許に限らず、普通免許のドライバーにも大いに関係する視覚機能です。

 

深視力の低下の原因には、生まれつきの斜視の他、視力の低下や眼球運動の不良があります。加齢により視力が低下するほか、眼球筋肉の衰えが加わると深視力が低下します。

 

 

🔲70歳以上で動体視力は0.1まで低下

 

通常の視力表を用いて計測するのは静止視力と言い、動く物を見る時の視力を動体視力と言います。自動車運転で問題になるのは動体視力です。

 

若い人でも、動体視力は静止視力よりも劣り、動く物のスピードが早くなると、その傾向はさらに大きくなります。加齢によって眼球を動かす筋肉の反応が衰えれば、動体視力は更に低下します。動体視力は、一般的にピークとなる20歳前後に0.8前後あったものが徐々に衰え始め、40代からは急激に低下していきます。平均的な70歳以上の人の動体視力は0.1前後まで低下しているという報告もあります。

 

そのため、70歳以上のドライバーは免許更新の際に動体視力検査を実施することになっています。

 

動体視力が低下すると、距離感覚が不良になります。その結果、車間距離が取りにくく、追突事故を起こす、右折時に対向車が思いがけなく早く近づいた、車線変更が難しいなど、日常的に運転に支障をきたす原因となります。

 

 

🔲視野角が20%も狭くなる

 

視野角は、一般成人で約200度と言われますが、高齢者では約160度まで狭くなり、特に視野角の中でも見えていても意識が行き届かない「周辺視野」を脳が認識しづらくなると言われています。

 

自動車を運転するときには、この「周辺視野」への意識が非常に大切です。視野角が狭くなると、横道から出てくる自転車、飛び出してくる子どもなどへの無意識の注意力が低下することに繋がりかねません。

 

 

🔲白内障の影響で眩しく感じ見え辛くなる

加齢により多くの人に発症する白内障は、見え方がぼんやりと濁ってしまうばかりでなく、視界が暗くなる、反対に眩しく感じて見え辛くなるという症状があります。視界が暗くなるのは、水晶体の濁りのために光が眼の中に十分に入らなくなり物が薄暗く見える場合が多く、眩しく見えるのは、濁り方によって水晶体内で光が乱反射し、眩しく見える場合があります。特に夜間に強い光を見た後に眩しく見える傾向があり、夜間の運転には注意が必要になります。

 

🔲老人性縮瞳が起きたら薄暗い時間は特に注意を

加齢によって瞳孔の反応が遅くなり、暗いところでも瞳孔が開きにくくなるので薄暗い場所でものが見えにくくなる現象も起こります。朝方や夕暮れ時などの運転では若い人よりも格段に見えにくくなり、注意が必要です。

 

自覚しにくい筋力や柔軟性の低下


運転するには、ハンドルを回したり、ブレーキやアクセルペダルを踏む筋力、また、前後左右を確認したりバック走行時には首の柔軟性も必要になります。

 

🔲筋力の低下はペダル操作に影響も

加齢により、筋肉量が減ることで、若い頃よりも重い物を持ち上げられなくなったことで自分の筋力の衰えに気づく人は多いものです。

しかし、自動車のハンドルは近年非常に軽い操作で動かせるものも多く、普段の運転では筋力の衰えに気づくことはあまりないかもしれません。駐車時にサイドブレーキを十分に引けずに車が動き出してしまうことで筋力の低下に気づく場合などはあるかもしれません。

また、とっさに力を出すことはできても、持続して筋力が続かず、高速道路などでアクセルを踏み続けることができない場合もあります。このようなケースでは一定の速度での走行が難しくなります。また、足の筋力の低下のためにブレーキの踏み込みが甘く、追突の危険も増加します。

 

🔲関節可動域が狭くなり柔軟性が失われる

40肩、50肩で首周りが固くなり、後方にバックする際に上半身を腰から回すようにしていませんか?痛みがなくても、若い頃よりも関節可動域は狭くなるので、左右後方の目視確認が難しくなります。

 

反射機能が鈍くなり「わかってはいるけれど身体が言うことを聞かない」


反射機能とは、例えば「目で見る→危険を察知する→ブレーキを踏む」という一連の認知判断とそれに即した適切な行動がすばやくできることを意味します。

前述したように、加齢に伴い視覚能力が低下し、運動能力も低下すると、「危険察知」までに今までよりも時間がかかり、「危険察知してからブレーキを踏む」までの時間もかかります。「わかってはいるけれど身体が言うことを聞かない」、これが反射機能が鈍くなったと言われる状態です。

 

「ぼんやり」とした時間が増え認知判断能力が低下


若いころに運転を始め、現在まで運転を続けている高齢ドライバーは、数十年の運転歴に自信を持っています。ですが、運転免許を取得してから社会環境は目まぐるしく変わり、経験が物を言う場面ばかりではなくなりました。

例えば、高齢ドライバーが高速道路を逆走するケースも、かつてはあまり存在しなかった片道二車線以上の道路やバイパス・高速道路などの中央分離帯がある、各方向が独立した自動車道での交通ルールを無視してしまった結果とも言えます。

加齢により認知能力が衰えると、「ぼんやり」とした時間が増えると言われます。そんな時には自分の慣れ親しんだ昔のやり方や、昔のルールが当たり前のように感じられてしまい、状況判断を大きく間違えてしまう可能性もあります。

「わかってはいるけれど身体が言うことを聞かない」状況とともに、大きな事故に繋がりかねません。

 

記憶力の低下で自動車の操作自体を間違える


 

個人差はありますが、加齢によって忘れやすくなることはよくあることです。例えば、車に乗って出かけたが、どこに行くのか忘れてしまった、道を間違えてしまった等、笑い話で済むうちはまだ良いのですが、記憶力の低下で自動車の操作自体を間違えるようになるのは心配です。

 

AT車が一般化したために、アクセルとブレーキの踏み間違いによる悲惨な事故が発生しやすくなりましたが、これも高齢ドライバーに多い事故の一因です。

 

上に述べたような認知判断能力や記憶力の低下については75歳以上の高齢ドライバーの免許更新時に認知機能検査などで対策が講じられるようにはなりましたが、まだ十分とは言えません。

 

 

いつまでも安全運転するために客観的な診断方法を利用しよう


加齢により身体能力が低下し、自動車の運転に影響があることはわかっていても、自動車なしでは生活に支障をきたす高齢ドライバーの方がほとんどです。また、「自分は大丈夫」という経験を背景にした自信があるのも高齢ドライバーの特徴と言われます。

 

まさかの事故を起こしてしまう前に、ドライバーの身体能力が運転にどのように影響しているかを客観的に映像で記録し、豊富なデータとプロの目で診断してもらえる高安診の高齢者安全運転診断サービスを利用する方法もあります。

 

診断だけでなく、その人に合わせた安全運転のためのアドバイスも継続的に受けられるフォローアップもあって安心です。

 

これからも安全に運転を続けるために、そのようなシステムを利用するのも賢い方法と言えるでしょう。