認知症のサインは接触事故や迷子!免許返納の勧めは第三者の診断が重要

高齢な家族が車の運転中に迷子、車庫入れで接触事故を繰り返すようになった場合、認知症の疑いがあるので早急に免許返納を促すようにしましょう。認知症になると車を安全に運転することが難しく、判断・認知能力の低下により重大な交通事故を引き起こす恐れがあり危険です。

 

今回は、自動車運転時の認知症行動や危険性、家族が免許返納に応じないときの対処方法を紹介します。

 

 

認知症のドライバーは安全な自動車運転を続けることが難しい


認知症を発症すると自分がいる場所を理解できない、注意力低下やハンドル操作・制動操作が遅くなるなどの症状が現れ、安全な運転を続けることが困難です。2018年に警視庁が発表した資料によると、80歳以上の高齢運転者による死亡事故件数は2007年から2017年の期間で全体的に増加傾向であり、また認知症のドライバーによる交通事故も少なくありません。[注1][注2]

 

認知能力の低下が軽度であれば、家族や知り合いなどが同乗してサポートを行うことで問題なく運転できるケースもあります。しかし、認知症の症状が重度である場合は安全な運転が見込めないため、自動車の運転を控えなくてはいけません。ドライバー本人に認知症の自覚がない場合、家族や知人が運転の中止・免許の自主返納をさせる必要があります。

 

 

認知症患者は交通事故を起こしてしまうリスクが高い


認知症患者は自動車の運転で必要な認知・判断・操作の一連の流れが円滑でなく、不適切な運転により交通事故を起こしやすい傾向にあります。

 

日本精神神経学会のシンポジウムによると、1995年から2005年までの期間で高知大学医学部附属病院の神経科精神科外来および関連機関を受診した運転免許を保有する認知症患者83名のうち、交通事故を起こしたことがある患者は4割以上の34名でした。[注3] 

 

これらの方々には、行き先忘れや迷子運転、駐車枠へ車両を入れる際の接触事故、ハンドル操作やギアチェンジの失敗、速度維持が難しい、信号無視や注意散漫、わき見運転による追突事故などが見られたそうです。

 

 認知症患者の自動車運転は他者を巻き込んでしまう危険性ももっています。そのため、75歳以上の高齢ドライバーは3年ごとに免許を更新する際に認知機能検査を受け、検査結果から認知症であると判断された場合は、免許停止や取り消しの手続きが取られます。

 

 

認知症患者は自動車に乗ったまま行方不明になってしまうことがある


 

認知症患者は自動車運転において事故を起こすリスクが高い点に加え、本人が車で外出してそのまま行方不明になってしまうケースがあります。2018年に公益財団法人「認知症の人と家族の会」が行った、在宅で認知症患者の看護経験がある人を対象とした意識調査によると、介護において「認知症患者が行方不明・交通事故を起こしたことがある」という回答は549件であり、そのうち約30.4%の167件が自動車運転による行方不明・交通事故でした。[注4]

 

認知症患者は自動車運転中に「自分が何のために自動車を運転しているのか」や「どこへ向かって運転しているのか」が正常に判断できなくなり、行方不明となってしまいやすいのです。自動車運転中に迷子となった認知症患者は長時間の運転で疲れてしまい、さらに適切な判断能力が低下して他者を巻き込む交通事故を引き起こしてしまうケースがあります。

 

2016年10月、横浜市で認知症の症状がある当時88歳の男性が運転する軽自動車が集団登校中の児童らに衝突し、小学生1人が死亡・7人が負傷する事故が起きました。事故を起こした男性は事故前日から迷子の状態であり、都内や横浜県内を約24時間も車で走行・徘徊を続けていたことが調査で判明しています。事故後の鑑定留置で男性は認知症と判明しましたが、男性は事故当時、自身が認知症であることを自覚していませんでした。[注5]

 

 

認知症の家族が免許返納に応じない場合は第三者による診断を受けてもらう

認知症のドライバーは、自身が認知症であることを認めたくない、症状の自覚がない、運転が楽しみであるといった理由から、家族が運転の中止・免許返納を勧めても応じないことがあります。認知症の家族が運転の中止や免許返納に応じない場合、第三者による診断を受けてもらいましょう。

 

公益財団法人「認知症の人と家族の会」の資料によると、免許を保有している認知症患者338人の免許返納状況は、本人が自分の意志で自主返納した割合は全体の13.6%、家族が本人に言って返納させた人が36.1%、返納を拒否し続けている人が12.6%でした。さらに認知症の家族が車を運転しないよう、車を隠す・処分するといった対策を行っているケースもあるとされています。[注6]

 

認知症の家族に免許返納を促すためには、第三者による診断で「車を安全に運転できない」という事実を本人に自覚してもらう必要があります。交通事故を防ぐためには自身の運転が家族や他者に危害を加えるリスクがあると感じさせ、自主的に運転を控える・免許を返納してもらうことが重要です。いつまで経っても免許返納に応じず運転を止めない場合、取り返しのつかない事故を起こしてしまうかもしれません。

 

そこで、日を追うごとに運転の危険度を増す家族に免許返納を促したい場合に最適な診断が「高齢者安全運転診断サービス(高安診)」です。高安診は映像解析やチェックシートなどによってドライバーの運転の癖および認知・判断・操作の各能力を詳細に分析します。診断結果からドライバーが安全運転を続けられる状態であるか判断でき、また本人が運転の様子を映像で見返してどのようなミスがあったか客観的に理解することも可能です。

 

 

高齢な親が免許を返納した後の生活は家族のサポートが必要


地方で暮らしている高齢者の場合、自動車による移動が生活の基盤となっている場合があります。家の近くに商業施設がなく公共交通機関も不便な地域の場合、車がないと生活用品の買い出しや病院への通院が困難になってしまうでしょう。とくに一人暮らしの親が免許を返納したケースで近くに頼れる人がいない場合、家族による生活のサポートが欠かせません。

 

家族の直接のサポートが難しい場合でも、免許返納後の高齢者の生活を充実させるための様々な方法があります。

 

自治体によっては、免許を自主返納する高齢者を対象とした外出支援事業を行っており、交通機関を利用する際の助成を受けられます。お住いの市区町村に確認してみましょう。

 

他には、移動手段として「電動車いす」を利用するという選択肢もあります。電動車いすは、道路交通法上では歩行者と同じ扱いであるため、免許は不要。時速1~6キロメートルで走行し、機種によってはフル充電で最大30キロメートル程度の連続走行が可能です。実際に免許返納後に利用している高齢者が増えているようです。

 

また、買い物であればスーパーの宅配サービスの利用を検討してみましょう。インターネット上で必要な食料品や日用品を注文できるネットスーパーは、免許を返納した高齢者にとって非常に便利なものとなります。パソコンやスマートフォンを使える高齢者はご自身で購入し、使用が難しい方は家族に注文だけしてもらうこともできます。家族が遠方に住んでいても、インターネットを通じて代理で注文するという連携も可能です。

 

 

[注1]警視庁:第5回 高齢者の移動手段の確保に関する検討会[pdf]

http://www.mlit.go.jp/common/001233746.pdf

 

[注2]警視庁:平成29年における交通死亡事故の特徴等について[pdf]

https://www.npa.go.jp/toukei/koutuu48/H29siboubunnseki.pdf

 

[注3]公益財団法人 日本精神神経学会:認知症と自動車運転[pdf]

https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1110080960.pdf

 

[注4]公益財団法人 認知症の人と家族の会:「認知症の人の行方不明や徘徊、自動車運転にかかわる実態調査」報告[pdf]

http://www.alzheimer.or.jp/wp-content/uploads/haikai-jidousyauntentyousa2018.pdf

 

[注5]産経ニュース:集団登校事故の88歳男性 「認知症が影響」と不起訴 横浜地検

https://www.sankei.com/affairs/news/170331/afr1703310042-n1.html

 

[注6] 公益財団法人 認知症の人と家族の会:「認知症の人の行方不明や徘徊、自動車運転にかかわる実態調査」報告[pdf]

http://www.alzheimer.or.jp/wp-content/uploads/haikai-jidousyauntentyousa2018.pdf